人吉球磨地方復興支援プロジェクト

人吉球磨アンバサダーズ
インタビュー

人吉球磨アンバサダーズ インタビュー

六角 精児

俳優

六角 精児 俳優

Ambassador 05

六角 精児

SEIJI ROKKAKU

俳優

復活した肥薩線とくま川鉄道に揺られて、
球磨焼酎を飲みにまた訪れたいと思います。

強烈な印象を残す名バイプレーヤーとしてテレビドラマや映画で活躍されている俳優の六角精児さん。旅好き、鉄道好き、そしてお酒好きとしても知られ、NHK BSプレミアムでは『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』の旅人として、日本各地のローカル線を訪ねています。そんな六角さんに、番組でも訪れた人吉・球磨での球磨焼酎体験と、肥薩線、そして球磨川の恵みを受けて育まれた地域の魅力を語っていただきます。

日本一種類が多い人吉・球磨の米焼酎。
これは地域の大事な財産ですよね。

『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』という番組で日本各地を旅されていますが、2019年2月放送の回では人吉・球磨を訪れていらっしゃいます。

あの時はJR肥薩線とくま川鉄道で球磨焼酎の酒蔵を訪ねました。6軒ぐらい回ったのかな。球磨川沿いにたくさんの酒蔵があって、蔵の方に球磨焼酎の作り方や歴史、飲み方など、いろいろ教えていただきながら飲んだんです。蒸溜の仕方も減圧と常圧があって味わいが全然違う。それぞれの個性を引き立てる飲み方があったりしてね。燗をした焼酎に氷を入れる「燗ロック」っていう飲み方も、この時のロケで地元の方に教わりました。米焼酎の種類が日本一多いってのは大事な財産ですよね。とにかく人吉・球磨はお酒のイメージです。

僕自身は常圧のガツンとした飲み口が好きで、それをロックで飲むのが好きですね。チェイサーを横において。あとは、水割りもよく飲みます。米焼酎の味わいはいいですね。芋や麦とはまたちがう旨さがある。米の香りがまたいい。

2020年の水害では焼酎蔵が水に浸かってしまうなど、蔵元も大打撃を受けました。

ニュースを知ったときは複雑な思いでした。球磨川は今もきれいな川ですが、昔の人が浅瀬を歩いていたら必ずポケットに鮎が入っていたとか、鰻を踏んづけてしまったとか、そういう話があるくらいの清流。それに地域の生活の基本になっている川ですよね。お酒を作るにしても球磨川があるからこそ美味しいお酒ができるわけだし、米だって清流から水を引いて作っているだろうし。生きるための恵みをたくさん与えてくれている川なのに、一方でこういう風に牙を剥いてしまう。

水害を伝える緊急報道がちょうど「呑み鉄本線・日本旅」の再放送の時間帯と重なって、テレビをつけたら急遽球磨川氾濫のニュースが流れてきたんですよ。それを見て、自分が訪れた場所が画面に映っているのを目にしました。人吉駅前が水に浸かっている場面とか、くま川鉄道の車両区が全部水に浸かってしまっている状態が放送されて、ああ、こんなところまで水が来たのだと。

六角 精児 俳優

人吉・球磨で印象に残った食べ物を聞いてみたところ、「鰻が美味かったなぁ」とのこと。

地元の方とお話しをして、自ら立ち直ろうとする力を感じました。

番組の総集編では、被災直後の現地とつないでお話もされたそうですね。

はい、取材で訪れた中のひとつ、人吉市内にある酒蔵だったんですけど、大変な被害に遭われていて。番組には僕が訪れた時に親切に説明してくださったお母さん(先代当主:現当主の母)が出てくれて、リモートでお話ししたんですけど、「あれから色々大変でした」とおっしゃっていました。「いろんな方に手伝っていただいて、ようやく立ち直ってきた」と。「蔵としてはまだまだ大変だけど、多くの人の力を借りているわけだから自分たちもしっかりしなければ」って気丈に話されていて、大変な被害に遭ったなかでも前を向いて立ち直ろうとしてるんだなと感じましたね。逆にこちらが勇気をもらったようなかたちでした。

人吉・球磨というところは、訪れる側からすると到達難易度の高い地域なんですよ。アクセスが容易じゃない。だからこそ、そこにいる人たちは自分たちの土地だという意識が強くて、結束力も強いんじゃないかと思うんです。そこで生まれ育った人たちの誇りですよね。それが、今回負けていられないっていう気丈さにつながっているんじゃないのかな。

これは持論なんですが、世の中に打たれ強い人なんて、いないと思うんですよ。人間、打たれたら弱る。大事なのはそこからどうやって立ち直るか。人は人から助けられることによって助かるものではなくて、自分がなんとかしようと思わないと助からない。自分で立ち直ろうと思っているからこそ、他の人の助けが生きるんだと思うんです。蔵のお母さんの言葉を聞いて、僕は自ら立ち直ろうとする力を感じました。それは、人吉の方たちの、土地に対する誇りみたいなものなのかなと思いますね。

鰻

本格炭火で焼き上げた鰻は、人吉の名物。六角さんも唸る味わいですが、水害により秘伝のたれを失ってしまった店舗も。

球磨川に沿って走る肥薩線の車窓の風景が強く印象に残っていますね。

肥薩線は地元から復旧の要望書が出されていますが、今のところ復旧の目処が立っていません*。鉄道好きの六角さんとしてはどんな思いを持っていますか? (*取材後、くま川鉄道は一部路線を今年11月に再開すると発表)

人吉・球磨というのは鉄道好きの僕にとって非常に魅力がある場所で、10年ほど前に2度ほどプライベートでも訪れているんです。肥薩線の人吉駅と吉松駅の間に、大畑(おこば)、矢岳(やたけ)、真幸(まさき)という3つの駅にまたがるループ・スイッチバックという、日本で唯一のしくみを持つ線路があるんです。険しい山岳地帯の急勾配を登るために山を一回りするループ線と、列車が振り子のように往復して登るスイッチバックが組み合わさった日本で唯一の鉄道で、それを体験するために「いさぶろう・しんぺい」という観光列車に乗ってきました。ここは鉄道ファンからしてみたら一度は訪れたい路線。でもそれだけじゃない。当初の目的はループ・スイッチバックだったんですけど、実際乗ってみるとそこに行く途中の八代から人吉までの球磨川に沿って走る区間がまたいいんです。車窓から見る風景の美しさが僕の中で強く印象に残ってますね。

肥薩線は水害の前から赤字路線だったんですが、だからといってそう簡単に無くせないのが鉄道というもの。復旧はもちろん簡単ではないと思いますよ。鉄橋も流されてしまっているし、水に浸かってしまった車両も傷んでいるでしょうし。何年かかかると思うけど、あの素晴らしい路線をどうか無くさないで欲しいって思いますね。

廃線になってバスの高速輸送になってしまったローカル線っていくつかありますけど、やはり駅というものが残るか残らないかで土地には大きな影響があると思います。地元の方々の足にもなっているでしょうし、インフラとしても観光資源としても鉄道は重要な役割を果たすものですよね。福島県の会津地方に只見線というローカル鉄道があって、2011年の新潟・福島豪雨で鉄橋が流され大きなダメージを受けたんですが、地元の人たちの復旧への熱意で行政を動かして再開に向かって進んでるんです。今の鉄道にとって、これは明るいニュースだと思っていて、ここの肥薩線とくま川鉄道でもそういう方向になればいいなと思うんですけどね。

ただね、復興の方は鉄道の再開を待たずにいろんなかたちで進めていくべきだと思いますね。鉄道が通ってなければ車で訪れればいいわけですから。人吉・球磨はお酒も食事もおいしいし、温泉もある。そういう魅力を県外に向けてどんどん発信していくのがいいんじゃないかな。というか、僕が言うまでもなくもうそういう風になっているか。人吉・球磨には若い人も多いし、人口が流出するだけじゃなくて外から流入してくるだけの魅力がある。なんというか、災害でそう簡単にへこたれない活力が存在してる。みなさん、洪水の翌日からなんとかしようとしてますからね。

六角 精児 俳優

「いさぶろう・しんぺい」に乗車した際の思い出や、ループ線とスイッチバックの構造について熱く語ってくれた六角さん。

鉄道を使っていろんなものを知りに行く。それが僕にとっての旅。

鉄道に乗ることそのものを楽しむ「乗り鉄」として全国各地を旅していらっしゃいますが、六角さんにとっての旅の醍醐味とは?

どの地域も同じですが、行ってみなければわからないんですよ。今の時代、調べたら情報はいくらでも出てくるし、画像や動画で風景も見ることができる。どこへ行けば何が見られるかもすぐわかる。何ならそれの評価まで星の数で出てくるじゃないですか。でも、実際に行ってみなければ、その土地の風土や魅力なんてわかりっこないですよ。例えばお酒がどんな風に美味しいのか、どんな味わい方をしたらより美味しいのか、地元の人や町の雰囲気はどんな感じなのかとか。何も調べないで旅に出てみてください。まったく調べないで行くといい。僕の場合は旅に出るきっかけが鉄道なんだけど、そうやって足を運べば知らなかったことに触れられる。それってその土地に出会えたということだし、そうやって全国を旅して回れば日本を知ることにもなる。鉄道を使っていろんなものを知りに行く、それが僕にとっての旅。

人吉・球磨を訪れた時も、球磨焼酎の歴史を教えてもらって、なぜここで米焼酎を作ることができたのかを知ったんです。山深い盆地で行けども行けどもまだ奥があるような土地なので、外から守られている。お上から田畑を隠すことができて、税金として徴収されるべき米を焼酎づくりに回せたのだと。ある意味農民の生きるための知恵ですよね。そういうところが面白いなと思いました。

この土地に誇りを持たれている方、この土地が好きな方、たくさんいらっしゃると思います。みなさんの地域が1日でも早く元通りになることを祈っています。僕も時間ができたら、またぜひ球磨焼酎を飲みに人吉・球磨を訪れたいと思います。その時に復活していれば、肥薩線とくま川鉄道を走る列車にもまた揺られてみたいですね。fin.

文:東海林美佳
写真:後藤秀二

profile

六角 精児(ろっかくせいじ)

1962年兵庫県生まれ。俳優。1982年、高校時代の演劇部の先輩である横内謙介に誘われ劇団善人会議(現・扉座)の旗揚げに参加、多くの劇団公演に出演。舞台からテレビドラマ、映画へと活動の場を広げ、名バイプレーヤーとしての地位を獲得する。2021年は、舞台『レ・ミゼラブル』にテナルディエ役で挑戦する。主な出演作に、映画『すばらしき世界』『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』、WOWOWドラマW『華麗なる一族』、大河ドラマ『おんな城主 直虎』、連続テレビ小説『おちょやん』など。大の鉄道好き&お酒好きとしても知られ、2015年から続くNHK BSプレミアム『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』では全国各地の味わい深い路線を訪れ紹介している。「六角精児バンド」のボーカル&ギターとしても活動中。
公式サイト

Ambassador 08

中田 裕二|シンガーソングライター

少しずつでも熊本に活気が戻ることを願っています。そしてそのときは、僕らもまた歌でお手伝いできたらうれしいですね。

中田 裕二シンガーソングライター

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火の国サラマンダーズ|プロ野球チーム

被災者にとって一番つらいのは「災害の事実が忘れられてしまうこと」。自分も忘れてはいけないし、多くの人に忘れてほしくないと感じました。

火の国サラマンダーズプロ野球チーム

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斉田 季実治|気象予報士

いつか起きる災害に備えるためには、天気に興味を持ち、楽しむことが重要だと考えています。

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巻 誠一郎|元プロサッカー選手

多くの人が現地を訪れるのが難しい今でも「意識し続ける」「気にかけ続ける」ということが大きな支援になる。

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小倉 ヒラク|発酵デザイナー

人吉・球磨の未来は「この町が好きだからなんとかしたい!」っていう人たちが作るのがいいと思うんです。

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中原 丈雄|俳優

僕がロケに行くことがなにかの力になるかもしれない。一日も早く人吉のみなさんの明るい笑顔が見られたらと願っています。

中原 丈雄俳優

Ambassador 01

轟 悠|宝塚歌劇団特別顧問

同じ痛みを理解できる人たちが人吉以外にもいる。そのことが次へ進む勇気のかけらになれば幸いです。

轟 悠宝塚歌劇団