人吉球磨地方復興支援プロジェクト

人吉球磨アンバサダーズ
インタビュー

人吉球磨アンバサダーズ インタビュー

小倉 ヒラク

発酵デザイナー

小倉 ヒラク 発酵デザイナー

Ambassador 03

小倉 ヒラク

HIRAKU OGURA

発酵デザイナー

人吉・球磨の未来は「この町が好きだからなんとかしたい!」
っていう人たちが作るのがいいと思うんです。

発酵のおいしさ・たのしさ・奥深さを、カジュアルにアウトプットする発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。メディアやイベントでの活躍はもちろん、日本の地方・世界の地域で、発酵目線のユニークなプロジェクトをデザインし続けています。2020年4月には東京・下北沢に、ヒラクさんが日本中からセレクトした発酵商品を購入したり、その場で味わったりできるお店、発酵デパートメントもオープン。そんなヒラクさんが人吉を訪れたのはまだ水害の傷跡も生々しく残っていた2020年9月のこと。ヒラクさんが人吉の町を見て感じたこと。そして、お付き合いのある人吉の味噌醤油蔵・緑屋本店さんとのコラボレーションを通して発見したこと。そこから、未来の人吉のヒントが見つかるかも知れません。

人吉の酒屋さんでは3棚くらい地元の焼酎で埋まっている。
これはすごくいい文化だなって思いました。

ヒラクさんは人吉にある緑屋本店さんとのお付き合いがあると聞きました。水害後に見た人吉の印象はどのようなものでしたか。

緑屋本店さんは、実は僕らのお店=発酵デパートメントのスタッフ青木くんの実家でもあるんです。だから彼からも聞かされていたんですが、本当に地元にずっと根付いてやっていらっしゃる、すごく信頼されているお店です。ものづくりの現場を見に行ったんですけど、とっても誠実にやっていらして、これはいいメーカーだなと思いました。
本当は他のいろんな醸造蔵も見に行きたかったんですが、町の復旧はまだとてもそんな感じじゃなくて。とりあえず米焼酎を死ぬほどいっぱいゲットして帰りました(笑)。

小倉 ヒラク 発酵デザイナー

発酵デパートメントの棚は日本各地の発酵食品でいっぱい。個性溢れる調味料のバリエーション、初めて出会う怪しい珍味たち、そしてもちろん、個性的なお酒やワインのラインナップも。

ヒラクさんと人吉・球磨とのそもそもの出会いについて教えていただけますか。

2019年に「Fermentation Tourism Nippon」っていう展覧会を渋谷ヒカリエのd47 MUSEUMで開催したんです。発酵の視点で日本の地方をもう一回再発見しようっていう意味で「発酵ツーリズム」という提案をしたんですが、この展覧会がすさまじかった。手前みそなんですけど、5万人来ました。
それがきっかけで全国の自治体から発酵ツーリズムっていうのはどういう風にやるのかって相談も来るようになって、その中のひとつが人吉だったんです。

人吉という場所は前から知ってはいたんですけど、改めて訪れたことで、本当に米焼酎の蔵がいっぱいあって、酒屋さんでは3棚くらい地元の焼酎で埋まっているのを見ることができました。これはすごくいい文化だなって思いました。

発酵ツーリズム的に見た人吉の面白さってどういうところだと思いましたか。

僕は水害後しか見ていないから語るのは難しいけど、人吉は近代的な都市計画を経ていない町だからか、昔の人の感覚に近い感じで歩ける町だなと思いました。人吉のことを調べたら、江戸時代の初期にはすでにたくさんの人が住んでいて栄えていたそうですが、これだけ内陸の奥地で栄えたのは、やはり水運がすごく発達していたからなんですね。そこでは川がいろんな人たちのハブになっていた。かつては、そこに自然と人が集まってきて、いろんなものをやりとしていたんだろうと思います。

日本の町の成り立ちには3パターンくらいあって、

① かなり人為的に作られた都市と、
② 地形条件から生まれた町、あとは
③ 離島のような超へき地。

僕が好きな町は②のタイプが多くて、地形的な必然性から町ができて、風土的に有利なものを生かして通運とか貿易が始まって、そこから付加価値の高いものづくりが生まれる――つまり文化が生まれるっていうことなんですけど――、そういう町なんですね。

発酵文化はこのうち②か③のタイプの町に集まるんですが、③の発酵文化は保存食が多いんですね。お漬物とかなんらかの備蓄食品とか。でね、②はお酒とかお醤油なんですよ。要は貿易品として付加価値が高いもの。人吉は典型的に②のカテゴリーって感じですね。

そういう町は散歩が楽しいですね。人工的に作られた都市って、政治的な事情とかおカネ的な事情でスポットを作っていくので、人間の身体感覚にあまり合っていないことも多いんですね。②の町は地形的に必然性があって、クルマがない時代の身体感覚に従って町が作られているので、川裾とか、山裾とかに歩いていくと、いい神社があるし、いいお寺もあるし、いい蔵もあるし、古い飲食店やお店もある。人吉もそうなっているじゃないですか。今はまだそこまで復旧が進んでいないけど、人吉って、歩いて超楽しい町のはずなんです。

球磨川

上流の奥球磨から人吉市の中心部を貫いて流れる球磨川は、この土地の風土と文化を生み出した象徴的な存在。

米焼酎にはローカリティがすごく残っている。
まだそれほど一般的じゃないところも僕には面白い。

発酵食という視点で見た時の人吉の特徴や個人的に好きなものはありますか。

やっぱり米焼酎はとてもいいですね。米焼酎って香りが華やかで、焼酎の中では一番爽やかなものだと思います。そういう、ひときわ個性があるお酒なんだけど、一般的にはあまり認知されていないところが僕からすると面白いですね。
僕もけっこう米焼酎飲むんですけど、熟成させてあるものや、度数高いやつをストレートで飲むとうまいんですよねえ。

米焼酎はいろんな飲み方ができるお酒ですね。

米焼酎のフローラルな感じはソーダ割りに合いますよね。ショートカクテルにも合うでしょうね。

いつきみそを使った即席のお味噌汁

発酵デパートメントには人吉の味噌醤油蔵=緑屋本店さんの商品も並んでいました。こちらはいつきみそを使った即席のお味噌汁。

発酵文化人類学

小倉ヒラクさんの代表的な著書「発酵文化人類学」。ポップな口当たりなのにエッセンスは特濃。カルチャー好きも、美味しいもの好きも必読。

味覚って見えない財産なんです。個性的な味覚を保持してる
地域に行くと、ほんとにうれしくなります。

米焼酎以外の発酵食ではいかがでしょう?

ほんとは人吉でいろいろ飲み倒したり食べ倒したりしたかったんだけど、今回は水害から日が浅くてできなかった。僕は地元の飲み屋さんとかで地元のおじちゃんおばちゃんと一緒に飲むの好きなんですけど、それでわかることって、そこの土地独特のバランスなんです。人吉って他の場所とはちょっと違う味覚を持ってるんだろうなということは予想できました。でも、本当に飲み倒してみないとわからない(笑)。

では、飲み倒しが課題ですね(笑)。

人吉がどういう成り立ちでできた町なのかということまでは大まかにわかったんだけど、その上に今度は生きている人間の文化が乗っていく。そこを改めて知ることができたらいいなって思ってます。だから、今回の水害の影響で、その文化が失われることがないといいなと。

そうですね、そこが気になりますよね。

そんな時こそ、僕たちみたいな外部のちからを利用してほしいんですよ。緑屋さんにしても、高橋酒造さんにしても、地元で醸造蔵を営んできた方々って、それが育まれた土地と文化に対して責任感を持っている人が多いですよね。地域の未来になるものは、そこにいる人たちが「人吉・球磨が好きだからなんとかしたい!」っていうところから始まるのがいいと思うんです。ぜひ、僕たちのちからをうまく使ってもらって、土地の文化の復興を後押ししてほしいなと思います。発酵デパートメントはそういうことのために存在しているとも言えるので。

緑屋さんの味噌や醤油の味はやはりその土地の文化を強く感じるものでしたか。

はい、かなり甘い味ですね。実は緑屋さんと一緒に無添加の麦味噌を新しい商品として作ったんです。その過程での僕らと緑屋店主の青木さんとのやりとりは笑っちゃうくらい地域性を感じるものでした。
青木さんは「糖類を添加しないと甘くならないですよ」って言うんですが、「いや、麦だけで充分甘いです」「いやいや、こっちではこれはあんまり甘いとは言えないですよ」「えっ、関東の僕らからするとめっちゃ甘いんですけど!」みたいな。

ほんと、味噌醤油になると人吉の味覚って甘さに振り切れてる。でもそれは米焼酎の爽やかな感じに合ってますよね。熊本は魚もいいものが穫れるから、脂の乗ったのを刺し身にして、甘い醤油で食べて米焼酎を飲むと最高ですよね。そういう味覚が人吉にはあるんだろうなと想像しました。
味覚って見えない財産なんです。僕もいろんなところに行きますけど、数万人単位で「極端な味覚を保持してる地域に行くとほんとにうれしくて、「よくぞこの極端な味覚を保ってきたな!」ってなります。

人吉もそういう「極端な味覚」を保ってきたと(笑)。

そうですね。とりあえず米焼酎と味噌、醤油を味わった範囲では極端ですね(笑)。素晴らしいことです。 ちなみに発酵デパートメントの商品担当は三河出身なんですけど、三河も日本屈指の極端な味覚を保持していて、しかもそのことを今まで気づいていなかったという。それ見ると僕はうれしくなります。「お前このままずっと極端なままでいろよ」って。そういうものを人吉も持ってるんだと思います。そういう人たちがわいわい食べたり飲んだりしている居酒屋さんに行って、地元の人たちと、「どういう銘柄が好きなの?」とかおしゃべりしながらお酒飲んで、温泉入るのが僕の直近の夢です。fin.

文:川崎和哉(Spoo! inc.)
写真:後藤秀二

小倉 ヒラク 発酵デザイナー

高橋酒造の銀しろを味わうヒラクさん。「米焼酎のフローラルな感じとカプロン酸エチルの香りがひらくから、ソーダ割りやショートカクテルとかも合うでしょうね」

profile

小倉ヒラク(おぐらひらく)

発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨の山の上に発酵ラボをつくり日々菌を育てながら微生物の世界を探求している。アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014を受賞。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』。YBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』パーソナリティ。2020年4月に下北沢に店舗
『発酵デパートメント』オープン。

Ambassador 06

斉田 季実治|気象予報士

いつか起きる災害に備えるためには、天気に興味を持ち、楽しむことが重要だと考えています。

斉田 季実治気象予報士

Ambassador 05

六角 精児|俳優

復活した肥薩線とくま川鉄道に揺られて、球磨焼酎を飲みにまた訪れたいと思います。

六角 精児俳優

Ambassador 04

巻 誠一郎|元プロサッカー選手

多くの人が現地を訪れるのが難しい今でも「意識し続ける」「気にかけ続ける」ということが大きな支援になる。

巻 誠一郎元プロサッカー選手

Ambassador 02

中原 丈雄|俳優

僕がロケに行くことがなにかの力になるかもしれない。一日も早く人吉のみなさんの明るい笑顔が見られたらと願っています。

中原 丈雄俳優

Ambassador 01

轟 悠|宝塚歌劇団特別顧問

同じ痛みを理解できる人たちが人吉以外にもいる。そのことが次へ進む勇気のかけらになれば幸いです。

轟 悠宝塚歌劇団